現在に至る少し前
現在は京都の街中に住んでおり、大阪よりはマシなのと、光害フィルターを知り、とにかく大口径で試してみたい、20cmの反射ならばと、安かったケンコーさんのSE200nの鏡筒だけを購入しました。
この当時、まだ子供が小さかったので、過去の経験から重い赤道儀は危険と判断し、ドブソニアンのような軽い木製の経緯台を自作しました。性能よりも何よりも、とにかく指を挟まないような工夫に重点を置きました。
しかしそれでは、せいぜい見つけられるものは、目視で見えるもの、月のほか、火星、木星、土星などの惑星とスバルやM42くらいまででした。追尾システムなんて自作の経緯台にはありませんし、天体を視野に導入しても、あっという間に視野から逃げていきます。天体を見るための知識も、探すための能力も、とにかく経験不足で低いままですし、大した機材もないものですから、思ったほどの観測もできず、がっかりしていました。
まあ、それでも導入した天体を家族に見せると大変喜んで覗きこんでくれたので、それはそれでよかったかな。
一生を終えるまでには、あれやこれやと色々な天体をこの目で見たり、あるいは下手くそであったとしても自分の手で撮影してみたいですね。
嘘ぽくも見えるほど、あまりにも美しい天体が、本当に実在するのか、あのように見えるのか、自分の目で機材で確かめたいのかもしれません。
私は視力も低いですし、生まれてこの方、満天の星空など、わずか数回くらいしかみたことがありません。
当然、この時期なら、この時間の、この辺に、この天体が見えるはず、などという知識も十分ではありません。
スマホでも使える便利なプラネタリウムソフトはありますが、なんというか、それに頼りっきりになると、モチベーションがなかなか上がらないというか、ダメなんですよね。
月あかりの影響を考慮して何を見ようかと計画できても、かなり先の天候までは予測できません。結局、「ああ、今晩も曇りかよ」とがっかりしてばかりなんですよね。晴れって結構レアなのだと思い知らされます。
それでも、ある程度、自分の頭の中に大体の位置関係が入ってくるようになると、プラネタリウムソフトも役に立ってきました。
昼間や夕方に空模様を見てから、
「おお、今日は晴れそうだし早く帰ろう。」
と、無理の無い手順に変わり、かすかに見える1等星などを手掛かりにしつつ、プラネタリウムソフトを使って、この後、どんな順番で、どんなふうに撮影しようかと考える、周辺の知らなかった天体を知る、という使い方になっています。
そもそも経験不足な私は、自力では天体を狙えないのです。
天体が好きとか言いながら、一般的な知識程度しかなく、カシオペアとかオリオンとかがわかる程度です。本に書かれた平面の星図を見ていても、実際の星空の眼視経験が少なすぎて、イメージしにくいのです。
やっぱり実物を見た経験が一番なのではないかと思います。
そして、「ああ、やはりメシエ・マラソンなんて隠居して田舎暮らしでもできるようになってからかなぁ」と諦めかけた頃だったのですけれど、
Plate solvingなる技術に出会いました。
これならなんとかなるだろうと、この技術を頼りに再びチャレンジし始めています。
Plate solvingは、最初、Astrometry.netというサイトにお世話になりました。
自分が撮った写真をアップしてやれば、赤経赤緯やどんな天体が写っていたのかなどを解析してくれるという、なんともありがたいサイトなのです(私なんかのテキトーな写真をアップしてよかったのでしょうか)。
https://nova.astrometry.net/upload
最初は、馬鹿なことを考えるもので、SE200nを乗せた自作の経緯台という変態仕様の機材なので、適当に夜空の短時間露光写真を撮って、ネット上のplate solvingで解析して、目標の天体に望遠鏡を、向けられるのでは?と思ったのがキッカケでした。
しかし、まあ、揺れるわ、まともに追尾(手動)できないわで、写真なんて撮れないし、運よく撮れてもネットのplate solvingには結構解析にも時間がかかるんですよね。こんな風に手動でやろうとするのは大間違いでした。見えてる場所が解析できた頃には、もうすでに、ずいぶんと星は動いちゃってます。こんな方法じゃ、リアルタイムの観測には使えないんですね。
それで、一旦、SE200nのような長焦点撮影は諦め、しばらくは、とりあえずデタラメに空の暗いところに短焦点のカメラレンズを向けて撮影し、あとから、All sky plate solverというソフトで解析するやり方に変わりました。
赤道儀は使っていなかったので、短時間の露光です。星は多少写真に写るのですが、そうしたところで、画角も広いし光害地ですから、星雲なんてほとんど写っていないのです。
けれども、あとで解析結果と見比べながら、
「ああ、ここにこんな天体がこんなサイズで見えるハズなのか」
などと、「見えないものを見ようと」することができたのです。
解析後に改めて写真をよく見ると、いくつかの明るい星と、白っぽいような、赤っぽいような、ぼんやりとした星団や星雲などが、微かに写っています。当たり前といえばそれまでですね。なんとも実に低レベルな天体写真です。
でも、それがなんとなく昔のフィルムの現像を楽しみに待つような感じで、ワクワクしながら解析結果を待つ、結果を見て驚く、なんていう風な感じで、結構面白かったのです。
ただ、なんでもPlate solvingで解析してくれるのかというと、ちょっとそれは難しい場合もありましてね、街灯のない写真の真ん中あたりだけにトリミングしたりするなど、うまく撮影できている部分だけを切り取って解析してやらねばなりません。
それから、焦点距離やCMOSのピクセルサイズを正確に入力しておかないと、長時間待たされた上に解析エラーが出るなどしてガックリとなります。
時間はかかるものの最初は多少いい加減な写真でも解析してくれるAstrometry.netのお世話になることも多かったです。
一度解いてもらった光学系の値として焦点距離やCMOSのピクセルサイズを All sky plate solver に入力すれば、同日の他の写真をスンナリと解いてくれます。
私の場合、思ってた焦点距離と解析で得られる焦点距離がずいぶん違うことが結構あったので、多分、私の思っているCMOSの画素のサイズとか、レンズとカメラの接続のどこかが何か間違っていたのでしょう。
さて、そんなデタラメな天体観測でも、いくつか写真を撮れば、まぐれで、有名な天体が視野に入っていたりします。
「ははーん、この辺に、この焦点距離で、こんな風に写るのか」
などという感じで遊んでいました。
もう一回言いますけれど、写真と言ってますが、私の写真の場合、巷に溢れる美麗な天体写真、星景写真を想像してはいけません。
この時点の私の写真には、ぼやーっと明るいそらに、点々とまばらな星が写っているだけで、他には、ほとんど何も写っていないのですよ。多少ヒストグラムを調整しますけどね。そんなに変わらないです。
「解析によれば、ここに、こんな天体が写っていたはず」
「ああ、言われてみれば確かになんか白っぽいw」
という程度なんです。
知識や経験の不足というのもいいものですね。なんだか宝探しをするかのようです。
あゝなんとロマンに溢れる観測なのでしょうか。
画像がないのはやっぱり寂しいので、下手くそな画像で恐縮ながら、2021年に大山に行って固定で撮った画像と、plate solvingの結果です。
写真の下の方が変なのは、無理矢理コンポジットしているからです。
確かこの時は、米NHIのImageJと、そのプラグインのStackRegで位置合わせしてからコンポジットしています。
場所が良いのに、私が未熟なばかりに、星は流れまくってますし、色の再現性も悪いです。うまく撮れません。腕を上げなくては。
解析に成功すると、下の画像のように緑の線で星座が表示され、星雲、星団、銀河などの位置が水色の楕円で示されています。
お宿のお庭で撮ったもの。
ちなみに自宅からだと、これくらい寂しい夜空です。
つづく